禁断と背徳の体験告白
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【続】2度目の告白[第3話]|純愛・青春・幼少期

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【続】2度目の告白[第3話]

読了目安 9分20秒

[作品No 3] 2025/12/ 7(Sun)
「やばっ…遅れてる…!」俺はクォーツの腕時計の正確さを呪った。
夕べは緊張であまり寝れなかった。少し寝坊した俺は待ち合わせ場所へ急いだ。
付き合い始めてから初めての日曜日。
俺達は約束どおり、初めてのデートを迎える。

駅前で待ち合わせ。俺達の家は駅3つ分程しか離れていなく、一緒に出かける事も出来たのだが、昨日の夜の電話。
「ふふっ、明日楽しみだね。デート」
「うん、どこに行こうか?」
「どこでもいいよ。あんまり予定を決めないで行くのがいいかな…」
「わかった。じゃあ、どうする? 家まで迎えに行こうか?」
「うーん、待ち合わせに…しない?」
「? いいけどどうして?」
「うんとね、待ち合わせの方が、デート…って感じがする…」
「ああ、そうかも。わかった。じゃ、明日の10時に駅前でどう?」
「うん!」

自分から決めといて遅れるなんて。
それでも10分程度だが、遅刻は遅刻だ。ようやく目的地に辿り着いた俺は彼女の姿を探した。
休日の駅の周りには人が多く、他にも待ち合わせている人も多かった。

「…ごめんなさい。待ち合わせをしてるから…」聞きなれた声。すぐ後に聞き慣れぬ声。
「えーいいじゃん、遊び行こうよ〜?」
…美樹だった。知らない若い男に言い寄られている。俺は二人に近づく。

「美樹? どうしたの?」
「…あ! 尚くん。えーと…」
「…なんだよ、彼氏いるのかよ〜。悪かったね、じゃ」そう言って彼は去った。
「今のって…もしかして…」
「……うん」美樹はみなまで言わなくとも聞きたいことを理解してくれた。

「ナンパ…か。初めて見た…。…って、そんな場合じゃない。
ご、ごめんな!? 俺が遅れたばっかりに!」俺は心から詫びる。
「い、いいの。もう大丈夫だから」
「でも俺がもっと早く来てれば…」
「違うの。あの人で…、ふ、二人目…だから…」
「え? じゃあ、その前にも?」
「う、うん…」恥ずかしそうに頷く美樹。
「…凄い…。い、いつもこうなの?」秋田の指摘を改めて思い出す。
やっぱり、俺は彼女の凄さをまだまだ理解していなかった。
「ううん、いつもは無視したり、走って逃げたり…。
でも今日は待ち合わせだったし、ここから動けなかったから…」
「あ〜俺が気が利かなかった。やっぱ、家まで迎えに行くべきだった!」
「いいの、私が待ち合わせにしてってお願いしたんだから」
「でもさ…」
「だからいいの。楽しかった。尚くん待ってるの。ナンパは…ちょっと迷惑だったけど」
複雑な表情で微笑む美樹。
「…美樹…。よしっ! じゃあ、仕切り直しな?」弾かれたように言った。
「え?」
そう言って俺は美樹から離れ、彼女から見えなくなる距離まで移動してから再び現れた。
「…ごめん、遅くなって。待った?」
少し戸惑っていた彼女だったが、「…ううん、今来たとこ。……これで…いいのかな?」
「完璧です」俺達は笑った。

それから俺はデパートの中で美樹の買い物に付き合った。
洋服を大体近くの量販店で安くて適当なものを、深く考えもせずに買っていた俺には敷居が高かった。
こじゃれたテナントのショップをまわる度、場違いな緊張感に襲われたが美樹はお構いなしだ。
相当買い物慣れしている。しかし、美樹が洋服を試着する度、俺に見せてくれるのは楽しかった。
「洋服好きなんだ?」買い物の途中で俺は尋ねる。
「うん、大好き。買い物も好きなんだ」実に女の子らしい回答。

そう言えば、美樹は俺から見ても垢抜けている。お洒落と呼ばれる部類だと思う。
着ているものも同年代の女の子と比べると高級感がある。お嬢さんなのだろうか。
学校にいる時は俺は学ラン、美樹はセーラー服だったから気にならなかったが、なんだかまたひとつ、釣り合わない要素を発見してしまった気がする。

「ね? 尚くんのも買おうよ?」
「え? お、俺はいいよ…。良く解からないし、…高そうだし…」やんわりと固辞する。
「そんなに高いのばかりじゃないって。あ、ここなんかいいんじゃない?」
そう言って美樹は俺を同じデパートの中の店に連れて行く。こんな所、足を運んだこともない。
「これから寒くなるから、セーターがいいかな? う〜ん、ブルゾンの方が気回しが利くかなぁ?」
美樹は既にコーディネートまで考えている。殆ど独り言だ。

彼女は洋服をひとつ手にとって、
「これなんかいいんじゃない? 似合うと思うよ、ラインが綺麗だし」
「…ラ、ラインって何?」
「あ、こっちかな。カバーオールの方が好き?」
「か、かばーおーるって…。…何をカバーしてるの?」
……拷問だ。美樹は丁寧にファッション用語を解説してくれるが、全く頭に入らない。
曖昧な相槌を繰り返すだけの俺。お洒落で綺麗なショップの中で、お洒落で綺麗な女の子に振り回されてうろたえる冴えない男の図。


「うーん、やっぱりこういうのは着ないとね。すみません、試着させてもらえますか?」
「ええ、どうぞ」柔らかな店員の返事。
俺達の滑稽な様子を見ても丁寧な接客が変わらないあたり、プロだ。
「…て、俺着るの?」そうだった。今試着するのは美樹じゃない。
「いいから。はい」そう言って美樹は真新しい上着を持って俺に着させようとする。
逃げられない。諦めた俺は袖を通した。すかさず店員が全身鏡を俺の目の前に持ってくる。
鮮やかだ。美樹と店員はまるで10年来の友達の様な阿吽の呼吸を見せた。

「…お」俺は鏡に映った自分の姿を見た。相変わらず冴えない高校生の顔が映っていたが、首から下はそれなりだった。美樹のセンスに間違いはなかった。
「…どう?」
「似合ってる…様な気がする。なんとなくだけど…」俺は遠慮がちに言った。
「えへへ、こういうの似合うと思ったんだ」美樹は自慢げに言う。
タグを見ると、高校生にも手の届かない値段ではなかった。
彼女の罠は周到だった。



「いい買い物できて良かったね」遅い昼食を取りながら、美樹は嬉しそうに言う。
「…うん。恥ずかしかったけど。まぁ、いい経験になったような気もする」
「そうそう、その調子。また行こうね?」
「そんなに何度も買えないけどな」俺は紅茶を飲みながら言った。
「も〜。でも楽しいでしょ? 何だか違う自分になった気がしたでしょ? 服を変えただけで」
「まぁ、…少しは…」実際その通りだったので否定できない。
「でも、なんだかなぁ。プリティー・ウーマンの男女の役が入れ替わったみたいだよ…」
「プリティー・ボーイだね。尚くんは」彼女はおかしそうに笑う。
「…やめてくれよ…」俺は恥ずかしくて目を逸らした。



「あ〜。いいもの見つけちゃった!」夕暮れも近づいた頃、彼女は大きな声を挙げて言った。
「…今度は何?」新たな未知なる恐怖に備え、俺は身構えて言った。
「えへへ。これこれ」そう言って彼女は俺を引っ張る。ゲームセンターの方に。
「いいものって、プリクラ?」彼女は筐体の前で止まる。
「撮ろう?」
「……」
「嫌なの? 撮った事ないの? 今流行ってるじゃない?」
「…前に一度だけ。男だけで撮った事がある」
「苦手なの?」
「写真は…見るのはいいんだけど撮られるのはあんまり…」
「大丈夫、プリクラと写真は違うもん」笑って言う。
安心して私の胸に飛び込んで来いと言わんばかりの表情だ。
どこがどう違うのか是非説明してもらおうと思い、口を開きかけたが、「……ダメなの?」少し悲しそうに、上目遣いにおねだりする。
「…その顔は卑怯だ…。ああもう、わかった。撮りますよ」
「やった!」一瞬にして顔が綻ぶ。現金なんだから。

「動いちゃダメだよ〜。ここのね、穴を見るんだよ?」
「わかった」
そう言って彼女は俺に寄り添い、俺の片腕を抱き締める。…プリクラも悪くないかも。
俺は彼女の柔らかさと暖かさを感じてそう思った。現金なのはお互い様だった。

「はい、あげる」そう言ってプリクラの半身を俺に渡す。
「何か変な顔だなぁ、俺」
「だって、動くからだよー」美樹は実に綺麗に写っている。とは言え、元々素材が違うか。
なんとなく、上手く俺達を表現している写真のように思えた。

初デートは順調に過ぎていく。気付けば夜も始まっていた。
「そろそろ帰らないと、送ってくよ」
「…あ、そうか。うん、そう…だね」美樹はどことなく元気のない返事。
「考えてる事は同じだよ。でも、もう遅いし、明日も会えるから…」
「そうだよね? うん、帰るよ」


俺は美樹と手をつないだまま、夜の道を歩いた。
「あ、ここ」指を差す美樹。白い指が指し示したのは綺麗なオートロックのマンションだった。
賃貸なのか、買ったのかはわからなかったが、高い物件である事は間違いない。

「じゃ…また明日な」
「うん、また明日」そう言って美樹はマンションのエントランスに消えた。

「また明日…」美樹がいなくなってからも、俺はもう一度呟いた。

---続く---
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