禁断と背徳の体験告白
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2度目の告白[第7話]|純愛・青春・幼少期

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2度目の告白[第7話]

読了目安 10分33秒

[作品No 7] 2025/12/ 1(Mon)
秋の空は晴天、風もなし。絶好のマラソン日和だった。
しかし、俺の方はコンディションは良くなかった。
夕べ、最後の練習を頑張りすぎたのが良くなかったのだろうか、身体は重かった。
しかし、走れないほどじゃない。なんにせよ、やるしかない。
俺は気合を入れて、家を出た。

今日は朝から、川原に集合だった。教師や役員の生徒が慌しく、準備をしていた。
「あ、おはよう。いよいよだね」しばらくして片瀬がやってきた。体操服から覗く長く白い手足が眩しい。
「おう、任しといて。…って、女子が先だったよね?」
「そう、女子が午前。男子は午後」
「一緒にやればいいのに」
「人が多くなっちゃうからでしょ? 多分。あ、それはそうと、ちゃんと応援してくれる?」
「するよ。優勝目指してるんだろ?」
「まーね。そんなに長距離は得意じゃないけど、やるからには全力でね」
「…そういうとこ、尊敬する。俺には全くないメンタリティーだ」
「褒められてるのか貶されてるのか…」
「いや、褒めてる。がんばれ。応援するから」
「うん!」力強くうなずいて、笑った。


やがて、女子のスタート時刻が近づく。
ぞろぞろと、100人近い女子達がグラウンドのトラックの開始線に並び始める。
400メートルトラックを一周して、土手のランニングコースを2kmと少しを往復し、最後にもう一度トラックを一周するコースらしい。計5km。

俺は秋田と様子を見ていた。
「片瀬なんだって?」秋田が聞く。
「優勝目指してるらしい」
「え? 嘘だろ? そりゃ無理だよ。いくらあいつでも」
「そうなのか?」
「だって、陸上部の長距離エースの奴もいるんだぞ。
いくら片瀬が運動神経良くても、毎日何kmも走ってる奴には勝てないよ。絶対」
「そう言われて見ればそうだな。なんでそんな大きい事言ったんだろう。片瀬」

俺達の会話をよそに、号砲が青空の下鳴り響く。
一気に駆け出すグループ。静かにその後を追うグループ。
早くも固まって談笑しながらダラダラと走り出すグループ。
片瀬は最初のグループだった。先頭グループに食らいついたまま、トラックを出、ジョギングコースに向かって行った。

「すごいな。俺なんてあの時点でもうバテてるよ」秋田が驚いた顔で言う。
「うん。速いな…」改めて彼女の凄さの片鱗を見た気がした。
「でも、今からあのペースじゃ後半持たないんじゃないか? 見ろ、先頭グループは…8人か。
片瀬以外は陸上部と、バスケ部しかいないよ。普段から死ぬほど走ってる奴等だ」
「そう…なのか…」俺は片瀬に感心する反面、不安だった。
「な、西野。見に行かないか? 応援しようよ。片瀬を」
「俺もそう思ってた。行こう」
俺達はジョギングコースの方へ駆け出した。

先頭グループは折り返し地点から、トラックの方へ戻ってきた。残り、1kmくらいだろうか。
先頭グループがこっちに向かって走ってくる。ジョギングコースの沿道には他にも男子の姿があった。
皆、仲のいい子、彼女、好きな子、同じクラスの子などを応援しているようだ。

「片瀬は…いた! まだ食らい付いてる。…けど、ちょっと離されてる。辛そうだ…。大丈夫か?」
秋田が焦り気味に言う。現在1位の生徒が他を20メートルほど離し、その後が第二集団。
第二集団は現在4人。片瀬はその集団の最後だった。いや、今はもうグループからやや遅れている。
大健闘と言えるが、顔は辛そうで足の運びも重そうだった。このままではさらに脱落していきそうだ。
一位の生徒が俺達の前を走り過ぎた。数秒後、第2集団も目の前を走る。残りは約700〜800メートル。
一番きつい時間帯かもしれない。

片瀬が俺たちに近づいてきた。
「がんばれ片瀬! ここを踏ん張るんだ!」
俺は気付いたら叫んでいた。片瀬が俺の方を見る。目の前を通り過ぎる。
その瞬間、俺は片瀬と併走した。沿道から。

「いいか、フォームが乱れてる。もっとコンパクトに走るんだ。フォームが乱れるともっと辛くなる。
頑張れ。優勝するんだろ!?」
俺は片瀬と2メートルほど離れて走りながら言った。
片瀬は俺の話を聞いて、力強くうなずいた。言葉で返事できないくらい、息が苦しいのだろう。
やがて、乱れ気味だったフォームも綺麗になっていく。
「そうだ、その調子! そのまま食らいつけ。お前以上にあいつらも苦しいんだ。
ここでちゃんと走ってれば、必ず追いつける。
見ろ。あいつらも顎が上がってきてるし、走り方も雑になってる。
そのまま行ければ勝てるぞ!! 頑張れ!!」俺は走りながら必死に彼女に言った。
やがて、彼女はもう一度強く頷いた後、速度を速めた。その時、片瀬は少し笑った。

そのまま彼女は走った。俺は立ち止まり、その背中を見送った。第二集団との差が縮まる。
――――抜いた。信じられなかった。が、第二集団の生徒達は明らかに失速していた。

「…おおお? いけるんじゃない?」秋田がこっちにやって来て言った。
「応援とアドバイスが効いたみたいだ」
「しかし、お前…。熱かったな」
「…しょうがないだろ。お互い健闘を誓ったしな。って、俺ちょっとゴールの方行って来る」
「え? あ、おい…」
俺は秋田を残し、トラックの方まで走った。コース通りに走る選手達と違い、土手を降りて直線距離を走ればこっちの方が速かった。

片瀬は必死にトップの選手を追い上げた。トラック勝負になった。
割れるような歓声。片瀬の人気もさる事ながら、デッドヒートの行方に皆釘付けだった。

やがて、1位のランナーは勝利の歓声に包まれた。
ゴールして、座り込む片瀬。激しい息をして苦しそうだ。
何人かの人が彼女に駆け寄ったが、片瀬は大丈夫だと言って、その人達から離れ、俺の方に歩いてきた。
まだ息は荒く、心底消耗した表情をしていた。

「…お疲れ。凄かったよ」
「…ありがとう。でも、負けちゃった。最後、追いつけなかった…」彼女は寂しそうに笑う。
「でも2位じゃないか。凄いよ。信じられない。1位は陸上部の子だもん」
「うん。確かに、良くやったとは思う。優勝するなんて言ってたけど、本当は無理じゃないかって思ってた。
でも、自分を奮い立たせたかったし」
「うん。よくやったよ」

「んん〜でも悔しい〜!!! あとちょっとだったんだよ? 20メートルなかったのに!
ああもう〜〜!!」彼女は拳を握り締めて言う。だけど、表情は明るかった。
「本当に負けず嫌いだね…」俺は心から感心する。
「でも、楽しかった。苦しかったけど、自分の力以上のものを出せた。
普段の私だったら、もっと順位は下だった」
「そうか?」
「うん。第二集団から離されそうになった時、ああ、もうダメだってちょっと思った。
でも、その時西野君が…」
「…あ〜」俺は少し恥ずかしくなる。
「一生懸命、応援してくれて、励ましてくれて、ちゃんと私と前の人の走りを見てて、アドバイスしてくれたから。だから頑張れた」
「いや、どうも…」
「うん。凄く力強くて、嬉しかったよ」
彼女は心底嬉しそうに笑った。輝くような笑み。
俺が今まで見た彼女の表情の中で一番美しく見えた顔だった。

「ありがとう」彼女は丁寧に言って、頭を下げた。
「いや、いいって。…でもこれで、俺も頑張らなくちゃいけなくなったね。益々。
片瀬は限界を超えたんだから」
「うん。頑張って。応援する」
「うん。ありがとう。頑張るよ」俺達は握手をした。

昼休み。これから始まるレースに備え、俺は軽く炭水化物を採っただけで昼は殆ど食べなかった。
事前に教師からあまり食べるなと説明があったが、やる気のない生徒達はいつも通り、旺盛な食欲を発揮していた。俺の隣にも、弁当をがっつく男が一人。

「よくそんな食えるな。これから8kmも走るってのに」俺は呆れたように秋田に言った。
「へ? 何言ってんの? 俺走んねーよ」
「はぁ?」
「これ食ったら食後の運動。優雅に秋の川原をウォーキング」
「…やっぱりか…」
「お前なんで食べないの? もしかして真面目に走んの?」
「ああ」
「嘘だろ?」
「ホント」
「…マジ?」
「大マジ」
「…どういう風の吹き回しだ? 去年は俺とダラダラ歩いてたじゃんか。それにお前、今日調子悪そうじゃん」
「調子悪くても本気で走る。去年と今年では事情が違うんだ」
「ははぁ…」…気付かれたか。この男は勘が鋭い。
「言わなくていいぞ」俺は会話を拒絶した。
「応援した片瀬美樹ちゃんの頑張りに触発されちゃったりしてるわけだ。もしかして」
意地悪そうな顔で言う。わざわざフルネームとちゃん付けで言う辺りに悪意が感じられる。
「ノーコメント」俺はなおも拒絶。

「愛の力で走るわけだ。愛で地球を救っちゃうわけだ。
生放送中に間に合うように、武道館目指して走っちゃうんだ。黄色いTシャツ着て」
「サライがカラオケで十八番のやつに言われたかないけどな」
「バカ、あれは、名曲中の名曲だぞ!? よし、聞かせてやる。あーあー。ゴホン」
「空き地のリサイタルはいい。そろそろ俺行くから。昼も終わりだ」俺は歩き始めた。
「ちょ、あそこまでヘタじゃねーよ。…って、おーい…」
俺は秋田を置き去りにした。今だけは彼と同じペースでいるわけにはいかない。

そろそろ身体を動かしていた方がいいか。俺は準備運動をする。秋田は友達と喋ってる。
「おーおー。気合入ってますねー」片瀬がやって来て言った。楽しそうだ。
「うん。俺はやる。片瀬もあんなに頑張ったし、俺はやる」
「すごーい。ホントにやる気になってる…」片瀬は呆けた顔で俺を見る。
「前も行ったが、俺に火を付けたのは君だ。ニンジン目指して頑張る」
「ライトマイファイヤーだね」
「随分渋い曲知ってるんだな…。俺もだけど」
俺達は笑った。

いよいよ、スタートの時が迫る。俺は少し興奮していた。アドレナリンが脳に広まっていくのを感じる。
武者震いがしてきた。スポーツにこんなに真剣に取り組もうとしているのは初めてだった。
元来、争い事、勝負事は好まない性質だったが、この時だけは違っていた。

――――やってやる。

---続く---
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