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「お前も玲子さんの影響で普通じゃなくなっているように見えるぞ。この前のビキニや今日のミニスカートは一体なんだ?」
「すみません。つい、玲子さんの変化が眩しくて、確かに影響されてしまいました。これからは気をつけますから」
私には釈然としないものが残りましたが、必死で哀願する妻を見て今回は許すこととし、玲子さんへ注意することもありませんでした。
それからの妻はミニスカートやローライズのジーンズをはくこともなく、以前のおとなしい格好に戻りました。私はほっとする反面、なんとなく物足りない気分になったのも事実です。妻は私に気を使ってか、玲子さんとの付き合いはバレーボールクラブだけに留めていました。
夏も終わり、秋の始めになると妻達のバレーボールクラブも定期的に試合が入るようで、練習時間がだんだん長くなっていきました。
ある週末、その日も練習のあった夜、私の携帯に玲子さんから電話が入りました。
「○○さん、玲子です」
「ああ、玲子さん。お久しぶりです」
「そう、海以来ですね。あの時はごめんなさい」
私の携帯に玲子さんが電話して来るなんて今までないことです。妻が練習中に怪我でもしたのでしょうか?
「実はまた試合が近いんですが、私と奥さんのコンビプレーが上手くいかなくて、少し特訓していくことになったんです。そのご連絡をと思って」
「そうですか、でも、どうして玲子さんが連絡を?」
妻が直接私に電話をすればすむことなのに。私は不思議に思いました。
「それが先日、あんなことがあったばかりでしょ? 紀美ちゃんから聞きました。私が軽率だったんですが、今回も自分から電話しても○○さんから信用してもらえないんじゃないかって、紀美ちゃんが……」
練習で遅くなるなどと私に言えば、竹井との仲を私に疑われると思ったのでしょう。
「わかりました。妻に代わってもらえますか?」
「はい、ちょっと待ってくださいね。紀美ちゃん、ご主人よ」
玲子さんが妻を呼ぶ声が聞こえます。少し待たされてから妻が電話口に出ました。
「もしもし……あなた……」
妻の声が少し変です。
「大丈夫か、随分息が荒いけど」
「ずっと練習していて……それで……あっ!」
「どうした?」
「な、なんでもありません。大丈夫です……そ、それで、玲子さんから聞いたと思いますが、もう少し練習していくことになって……すみません」
「わかった。あまり無理しないようにしろよ」
「あ、ありがとうございます……うっ」
そこで電話は切れましたが、切れる寸前に妻が低いうめき声を上げたような気がしました。
私は何か胸騒ぎのようなものを感じましたが、玲子さんが一緒だから、ということで自分を納得させました。その日、妻はいつもより2時間半程も遅い夜の9時過ぎに帰って来ました。
「奥さんを遅くまでお借りしてすみません」
チャイムが鳴ったので迎えに出ると、妻と玲子さんが玄関口に立っていました。妻は玲子さんの車で送ってもらったようです。Tシャツとジーンズ姿の妻は疲れ切っているようで、玲子さんに支えられるようにして立っています。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……」
妻は喘ぐように答えます。
「ごめんなさい、つい練習に夢中になっちゃって。でも、紀美ちゃんは私よりもずっと若くて体力もありますから、心配ありませんよ」
玲子さんはいつものような明るい声で私に話しかけます。
「おかげさまであと3、4回今日のような練習をすれば、コンビは完成するって、遠藤さんも竹井さんも言っていました。やっぱり紀美ちゃんは筋が良いそうです」
妻が玲子さんの方をちらりと見ました。なぜかその目には一瞬脅えたような色が浮かんでいました。
「そうですか……わざわざ送っていただいてありがとうございます」
「いいえ、どういたしまして。それじゃ、紀美ちゃん、また来週ね」
---続く---