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「好きだよ」「あいたいよ」「寂しいよ」という言葉の合間に、今度移り住んだ場所のことがちょこちょこと書いてあった。
その日の夜、俺は愛美ちゃんに電話を掛けた。電話の向こうの彼女の声は、頼りなく、まるで宇宙の果てと交信しているようだった。
子供である自分達の間にどうにもできない障壁として立ちはだかって2百キロという距離を実感させられた。
俺たちはたわいも無い会話を何時間も続けた。終いに俺達は喋ることがなくなっても、電話を切りたくなかった。
ただただ微かに伝わってくる相手の息遣いを受話器を握ったままずうっと聞いていたかった。
通話料も馬鹿にならかっただろうに、俺達の恵まれない小さな恋を哀れんでか、親たちは何も言わなかった。
愛美ちゃんの手紙は殆ど毎日のように来た。一度に2通来るときもあった。
俺も一生懸命返事を書いたがとても書ききれるものではなかった。その分電話で補った。
俺たちは夏休みが待ち遠しかった。5月の連休も終わった頃だろうか、彼女から来る手紙の中に悪天候の兆候が現れていた。
でもまだ子供の俺にはその重要性に気がつかなかった。
「和也君」という名前がポツリ、ポツリと顔を出すようになった。
近所に住んでる子で、すごく親切な子だということだ。
でもその頃の俺は、あまり気にもとめていなかった。俺には、愛美ちゃんしか見えていなかった。
俺の回りは、愛美ちゃんがいなくなった事をのぞいては前と何の変わりも無かった。
俺も一生懸命、日記のようにして手紙を書いた。
待望の夏休みがやってきた。学校が終わって二日後、愛美ちゃんがやってきた。
その日、母親が働いていたのか、俺は、一人で電車を乗り継いで新幹線の駅まで行った。
愛美ちゃんはお母さんと来る事になってた。
予定の時刻にプラットフォームで待っていたけど、ぞろぞろと降りてくる人のなかに愛美ちゃんはいなかった。
俺は半分泣きたい気持ちをおさえて、フォームを行ったり来たりした。
そのうち、人影もまばらになって、別の列車が入ってきた。それにも愛美ちゃんたちは乗っていなかった。
俺は、がっかりしながら、階段をとぼとぼ下りて、改札を抜けると、「リョウくーん」という、あの可愛い愛美ちゃんの声が後ろから聞こえた。
俺が振りむくと、嬉しそうな顔をした愛美ちゃんが、俺の方に向かって走っていた。
俺はそのとたんに嬉しくて、涙が出てきた。
愛美ちゃんはぎゅうっと俺に抱きついて「会いたかったよう」といって、泣いた。
愛美ちゃんのお母さんがすぐ追いついてきて、「まあまあ、二人ともこんなところで泣いてないで、早くリョウ君のお家に行こう」といった。
俺は、最高に幸せだった。そして、それから一ヶ月、夢のような毎日を過ごした。
お互いに内容は違うけど、一緒に宿題をやった。二人で、理科研究もやった。
ところで、その頃、11歳になった愛美ちゃんの体は明らかに変化し始めていた。
俺がそれに気がついたのは、来たその日に一緒にお風呂に入ったときだった。
最初、以前から肉付きが良かった彼女の、お尻のあたりが太ったように見えた。
でもすぐ、それよりも、もっと顕著な変化に気がついた。彼女の胸には、それまで無かった膨らみが二つできていた。それは紛れもなく膨らみ始めたおっぱいだった。
これには、6年生だった俺も興奮した。俺は、「ああ、おっぱい」と思わず言った。
二人で湯船に入ってるときに俺が気になってまじまじと見ていると、彼女は、「触ってもいいよ」といった。それまで、愛美ちゃんの胸を触ったことは一度も無かった。
俺はそおっと腫れ物にでも触るように触ってみた。おもったよりも堅かった。
愛美ちゃんは、「うーん」と気持ちよさそうな声を上げながら笑った。
「気持ちいいの?」というと、「うん」というので、もっと触ってあげた。
彼女が、気持ちよさそうにうっとりした顔をすると、俺はすごく興奮した。
あと、彼女の股間のふくらみの周りにも、産毛よりも濃い毛が生えつつあった。
俺の方はというと、まだ以前と変わらぬ、つるつるだった。でもそんなことはぜんぜん気にしなかった。
俺たちは以前と同じようにオチンチンをオマンコにはめて遊んだ。
でも、その時から、はめながら、愛美ちゃんの胸を触ったりするようになった。
夏休みも終わる頃、今度は、俺と母親が、愛美ちゃんを東京の家まで送り届ける事になった。
俺たちは新幹線にのって東京にいった。新幹線の中を二人で探険した。
乗車口のところで二人で外を見ながら、軽くキスをしたりして、いつものようにいちゃついていたら、可愛いと思ったのだろうか、カメラマン風のおじさんが、写真を取らせてくれと頼んできたりした。
その頃、俺たちの親が、どこまで俺たちの関係を知っていたか定かじゃないが、キスしたりしてるのは知っていたかも知れない。
なにしろ、本当に、いつもベタベタ引っ付いていたのだから。
彼女の家は、自分が3年生まで住んでいた社宅だった。ただ家自体は、建て替えられていた。
でも自分に取っては、懐かしい故郷に戻ったような気持ちだった。
母親は、叔母の家に一泊、俺は、愛美ちゃんの家に一泊した。
彼女が、同級生の写真などを見せてくれた。俺の知っている子も沢山いた。
今回は、どういう訳か、前回の別れの時ほど感傷的にならなかった。
どういうのか、また冬休みになれば会えるという確信があったからかもしれない。
俺たちは、次の日、近くの駅で「笑って」バイバイをした。ホームの上で、冬休みに絶対あおうねといって指きりげんまんをした。
その約束は結局、果たされることは無かったのだが。
俺たちはまた手紙と電話にたよる毎日が始まった。ところが、そのうち、彼女の手紙の回数が減ってきた。手紙が3日4日来ないことがあった。
そして、もう冬も近づいたある日、俺は一通の手紙を受け取った。
それは愛美ちゃんからじゃなかった。封筒の差出人の欄に○○和也と書いてあった。
何が書いてあったか詳しくは覚えていないが、とにかく、もう愛美ちゃんと付き合うなという内容だった。
「愛美をこれ以上きずつけるな」というようなことが書いてあった。
これもまた晴天の霹靂だった。俺が愛美ちゃんをいつ傷つけた?なんでそんな事を、このわけのわからん赤の他人に言われなきゃいけないんだと思った。
俺は、早速愛美ちゃんに電話をした。彼女にその手紙の事を話した。
そして、「ねえ、いったいこの和也って子は何?」と聞くと、「お友達。私がさびしいからいろいろ私の話を聞いてくれる」といった。
俺が、「ぼく、愛美ちゃんを傷つけたの?」ときくと、「ううん、私はリョウ君好きだもん。」といった。
「じゃあなんで、その人はこんなこといってんの」ときくと、「知らない」というだけだった。
俺は、和也という人と付き合わないでくれという事を言ったけど、彼女は、「なんで?和也君は、すごくいい友達だもん」というだけだった。
そして、いろいろ問い詰めているうちに、彼女は黙ってしまった。
俺たちは、多分一時間以上も無言で電話口に立ったままだった。
次の日曜日に俺は愛美ちゃんに会いに行くことにした。親に、愛美ちゃんとどうしても話したいことがあるからと頼み込んで許しをもらった。
俺はその頃よく一人で電車に乗っていたので問題なかった。俺は愛美ちゃんには何も連絡しなかった。
彼女の家に着くと、お母さんが玄関口にでて、俺を見てびっくりして「あらぁ、リョウ君どうしたの?」といった。
愛美ちゃんは遊びに行っていなかった。
お母さんは「寒いし、上がってまったら」と言ったが俺は、玄関の外でまった。
俺は何時間も待った。愛美ちゃんのお母さんが途中で心配して何回か出てきて中に入るように奨めたが、俺は外で待ち続けた。
日も沈みかけて、薄暗くなり始めた頃、愛美ちゃんが戻ってきた。彼女は一人じゃなかった。
結構背の高い中学生らしき男の子の腕に自分の腕を絡めて嬉しそうになんか話しながら歩いてきた。
俺の姿を見るなり、彼女の顔色が変わるのがわかった。彼女はあわてて、彼から離れた。
彼女は「リョウ君、どうしたの」と一言いった。
その中学生は俺を見て、「ああ、お前がリョウか」と吐き捨てるようにいった。
愛美ちゃんは、「和也君」と一言いった。
---続く---