禁断と背徳の体験告白
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連載作品(官能小説)

二人の妻[第65話]|人妻・不倫・浮気

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二人の妻[第65話]

読了目安 3分52秒

[作品No 65] 2024/ 5/ 4(Sat)
隆一はその場で10分ほど突っ立っていたが、これ以上この場所で待っていると凍えてしまう。離れた場所でも良いからどこか店に入ろうか、それとも引き返そうかと迷っていると、通りの向こうから江美子に良く似た女が歩いて来ることに気づく。

(あれは……)

髪型といい服装といい、遠目では江美子にそっくりである。さっき店に入ったのはひょっとして江美子ではなかったのか、と隆一は驚いてその女を見つめる。女が近づき隆一と目が会う。瞬間、隆一はあわてて目を逸らす。

(麻里だ)

顔立ちは確かに麻里のものなのに、どうしてこんなに近づくまで分からなかったのか。あまりに江美子とよく似ていたため動揺していたせいか。

(違う)

雰囲気や歩き方が、隆一の知っている麻里のものではないのだ。5年経てばあれほど変わるものか。

麻里は幸い隆一には気づかなかったようで、江美子が入ったバーへと降りて行く。隆一はしばらく迷っていたが、近くのドラッグストアに飛び込むとマスクと脱脂綿を購入する。

隆一は綿を小さくちぎって口に含み、マスクで口を覆う。そして思い切って地下へと降りて行った。

「いらっしゃいませ」

バーの中は意外と広い。バーテンダーが隆一を認めて挨拶する。隆一はカウンターの出口側に近いコーナーに座る。

江美子と麻里はカウンターの反対側の隅に並んで座り、何やら話をしている。隆一が入ってきた途端、ちらと視線を送って来たが、すぐに何もなかったように話し出す。どうやら気づかれずにすんだらしい。

「何か作りましょうか」

バーテンダーに聞かれて隆一はマスクを口から外す。

「サイドカーを」
「かしこまりました」

バーテンダーは会釈をするとブランデーとホワイトキュラソー、レモンジュースをシェイカーに入れてシェイクし始める。やがて隆一の前にカクテルグラスが置かれる。

隆一はサイドカーを呑み始める。バーテンダーの腕は悪くない。隆一は改めて麻里と江美子に視線を送る。二人はまるで姉妹のように見える。江美子がいわゆるサブリナカットにしてから多少なりとも感じていたことだったが、服装といい、仕草といい、非常によく似ている。

(昔の麻里に似ているというわけでもない。まるでもうひとりの麻里がいて、江美子がそれに近づいてきているといった風に思える)

それにしても江美子と麻里はここで一体何をしているのか。一人の男の先妻と今の妻が会って話をしている。あまり日常的な光景とは言えないが、世の中にはそういったこともさほど珍しくはないだろう。先妻が残して来た娘の養育問題など、相談すべきことはないとは言えない。しかしそれが男には内緒で行われているとしたらどうだろう。

さらに二人が出会ったきっかけが問題である。江美子は麻里のことを、10月にK温泉のTホテルで会うまで知らなかったのだ。それまで隆一や理穂との関係がうまくいっていなかったというのならともかく。いまさら麻里に何を相談することがあるというのか。

(いや、むしろ色々な問題が出て来たのは、あの時有川と麻里に会ってからではないのか)

「水」という名で送られて来るメールによって、江美子と水上の過去の不倫が露見したこと、そして江美子の驚くような変貌と不可解な行動。

(それらの出来事と麻里が関係しているなどとは思ってもいなかった。なぜなら有川のもとに走った麻里の側に今さら俺とかかわるような理由はないからだ。しかし、それは俺の思い違いだったのだろうか)

耳をすまして見ても、隆一がいる場所から江美子と麻里の会話は聞こえてこない。隆一の後でカップルが一組と、女二人連れの客が入って来る。その度に江美子と麻里は入り口の方へ素早く目を走らせる。

---続く---
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