禁断と背徳の体験告白
前の画面 総合トップ 閲覧履歴
連載作品(官能小説)

侵略[第六章 忌まわしい記憶<A>]|寝取り・寝取られ

お気に入りお気に入り登録済み

←前の作品  目次  次の作品→
    文字サイズ---
  • LL
  • L
  • M
侵略[第六章 忌まわしい記憶<A>]

読了目安 3分17秒

[作品No 6] 2024/ 3/31(Sun)
 二十四年前。父・謙介の設立した「スギヤマ・インターナショナル」は順調に業績を伸ばしていった。商社時代に得たノウハウと人脈、そして大企業にはないフットワークの良さを駆使して、さまざまな輸入販売ビジネスに打って出た。
 なかでも謙介が注力したのは北欧の家具である。スウェーデンへ自ら出向き、仕入れてくる高級テーブルやチェスト、ベッドなどが飛ぶように売れた。
 やがてジャカルタに工場を設け、北欧のデザインを模した家具を自社生産するようになった。原価が十分の一程度なのだから、利幅も大きい。
「注文に製造が追いつかない。次はタイに工場を作ろう」
 さらなる拡大路線を歩もうとした矢先、バブルが弾けた。高級家具の需要は激減。過剰な設備投資が祟り、会社は瞬く間に傾いた。
 順風満帆な半生で味わう初の挫折。逆境に慣れていない謙介はたちまち追い込まれた。

 修造がふらりと現われたのは、そんなときである。
「兄さんの役に立ちたいんだ」
 かつては忌み嫌っていた弟。しかし、心底打ちのめされていた謙介は、身内の温かな言葉に涙を流した。
「とりあえず株主たちには俺が頭を下げて回るから、兄さんは資金繰りに専念してくれよ」
 その後に見せた修造の手腕は鮮やかだった。時には土下座しての泣き落としや女を送り込んでの色仕掛け、またある時は昔なじみのならず者を同道させての恫喝。あらゆる手段を駆使して株主たちを沈黙させていった。
 だが、資金補充のめどはつかず、創業十年にしてスギヤマ・インターナショナルは倒産した。

「さすがに疲れたな……。久しぶりに海にでも行って気分転換してくるよ」
 言い置いて家を出た謙介は、それきり帰ってこなかった。葉山のマリーナから、愛用のクルーザーが消えていた。
 遺体が発見されたのは、五日後のことだ。自殺か事故か。いずれにしても非業の最期だった。後には母・涼子と私だけが残された。

 父が遺した借金は母と会社を受取人に加入していた生命保険金、新潟の生家から相続した山林、世田谷の邸宅や高級自動車、クルーザー他、一切を売り払った金で購えた。それでも足りないはずだったが、裏社会に通じた修造が奔走した結果、私たち母子は人並みの生活を赦されたのだ。
「兄貴を救えなかった俺にも責任がある。困ったことがあればいつでも言ってくれ」
 大黒柱を喪った私たちにとって、修造は唯一の頼るべき存在となった。
 倒産、自殺によって謙介は地元の英雄という座から転落した。彼の代わりに杉山家当主を襲ったのが反りの合わない従兄弟だったこともあり、私たちに援助の手は差し伸べられなかった。
 一方、静岡の名門である母の生家もバブル崩壊で資産を失い、夜逃げ同然に離散していた。箱入り娘のまま謙介に嫁ぎ、生活のすべを持たない母が、叔父に依存するようになっていったのも仕方のないことだったろう。
「こんなところですまないな、義姉さん。もうしばらく辛抱してくれ」
 修造があてがってくれた北千住の小さなアパート。近隣に誰一人として知己のない暮らしの中で、母は時おり訪れる修造を心待ちにするようになった。
「修造さんがいてくれなければ、もう生きていけないわ」

 そして、母は修造の女になった。

---続く---
スポンサー広告