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私は思わず声に出して妻に呼びかけました。
「あなた……?」
ディスプレイの中の妻が不思議そうな顔をします。
「どうしたんだ、絵梨子」
「今、主人の声が……」
「そんなことがあるはずないだろう。おおかた絵梨子の罪悪感が幻聴を生んだのではないのか。ぼうっとしていないで先を続けろ」
「はい、わかりました……」
絵梨子は再びカメラに顔を向けます。
「あなた……絵梨子は犬山会長様をどうしようもないほど愛してしまったのです。いえ、愛という言葉では正しくない、愛と言う言葉だけでは足らないかもしれません。犬山会長様にこの身も心も捧げたい──絵梨子は今、そんな気持ちなのです」
「最初絵梨子は自分の気持ちを、犬山会長様の妻になりたい、いえ、それがかなわないのなら愛人になりたいということだろうかと思いました。でも、自分の心とよく向き合ってみたら、それとは違うのだということがわかりました」
「犬山会長様の目の前で臓物まで露にして、女の穴という穴を──あなた、はしたなくてすみません。絵梨子はこんな言葉も平気で口に出来る女になってしまったのです──虐められ、極限の羞恥の姿を晒した絵梨子は、犬山会長様のいわれるがままに生きることに悦びを感じるようになり、会長様の奴隷として生きたいと真剣に思うようになったのです」
「絵梨子は明日、犬山会長様のお言いつけどおり、道岡様のクリニックで肉体改造の手術を受けます。その後会長様のご指示により、西伊豆の温泉にピンクコンパニオンとして売られていきます。これからはピンクコンパニオンとしてお客様の宴席で素っ裸で接待したり、野球拳のお相手をしたり、殿方と混浴をするだけでなく、いわゆる枕営業──つ、つまりお客様のセックスのお相手もすることになるのです」
「ま、また、コンパニオン業者が経営するストリップ劇場で、踊り子として出演させていただくこともあるそうです。で、でも絵梨子はまともなストリッパーとしての踊りは出来ませんので、そこでは実演専門──つまり舞台の上で男優の方とセックスをお見せすることでお金をいただくストリッパーになると思います」
「そ、そんなわけですから絵梨子はもうあなたの妻でいることは出来ません。浩樹の母でいることも出来ません。私の勝手でお別れをするのですから、慰謝料や養育費をお支払しなければならないところですが、ピンクコンパニオンとしてのお給料も全て犬山様に捧げることになっておりますので、も、申し訳ございませんが、絵梨子への財産分与と相殺していただきたくお願いいたします」
これは妻の本心ではない、犬山から言わされているに違いないと私は必死で自分を納得させようとするのですが、妻のすべてを諦めきったような静かな口調がそれを否定するようで、私の心は乱れます。
長い台詞を言い終えた妻に男たちの拍手が沸き起こります。犬山は妻をいたわるように肩に手をかけて引き寄せます。
「よく言えたな、絵梨子」
「ああ……」
私に対する恥ずかしい告白を強いられた妻は、その場に私がいないと思っていてもやはり心が乱れたのでしょう。妻は自分から犬山の唇を求めていきました。犬山は妻を抱きながら妻に熱い接吻を注ぎ込みます。
「いやいや、お二人はすっかり息が合っていますな」
「○○さんがこれほど犬山会長に首っ丈になるとは、さすがですな」
役員たちは口笛を吹いて犬山と妻を冷やかします。
熱い接吻を終えた妻は、犬山の胸にすがりつくようにします。
「ねえ、ねえ、犬山様……絵梨子、もう犬山様しかいないの。お願い、絵梨子を捨てないで」
「ああ、わかっている。絵梨子は永遠に俺の奴隷だ」
「本当? 絵梨子、信じていいのね」
「もちろんだ。絵梨子が売られてからも、ちょくちょく西伊豆まで行って絵梨子を座敷に呼んでやるし、ストリップも見に行ってやろう」
「嬉しい……絵梨子、犬山様がいらっしゃるのを毎日お待ちしておりますわ」
「まじめに働いていたら、いずれ買い戻してやってもいいぞ」
「本当? 本当ね? ああ……そうしてくださるなら、絵梨子、何でもいたしますわ」
妻はすっかり気を高ぶらせて、犬山の唇、首、胸元など、ところ構わず接吻を注ぎ込んでいきます。私は妻を完全に失ってしまったという喪失感、そして犬山に対する敗北感に打ちのめされていました。
妻は続けて、それぞれの役員に対して「生まれ変わった絵梨子の決意表明」をさせられました。
「毛塚様……絵梨子は明日の肉体改造が終わったら西伊豆に参りますが、毛塚様のブティックの下着モデルにお使いになりたいのでしたら、いつでもお声をおかけください。絵梨子は藤村さんに比べて胸が小さいし、お尻が大きく、み、見苦しい身体ですが、絵梨子でお役に立てるのならどんなエッチな下着のモデルでも、絵梨子は構いませんわ」
---続く---