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1回目は道岡という副会長が送ってきましたが、2回目は毛塚、3回目は橋本という風に毎回違う人間が送ってきます。
PTA役員といういわばボランティアの仕事に就いた妻を応援するとは言いましたし、自分と同じ主婦以外の人間と付き合うことで見聞が広くなることは妻にとって良いことと思っていましたが、こう度々だとさすがに私も不審を抱き始めました。
帰りが遅くならない週末にも妻の表情が暗いことも気になります。しかしその時点では私は、男たちが役員会にかこつけて酒を飲むのを楽しんでおり、妻はそれに付き合わされることが憂鬱なんだろう、といった程度の考えでいました。
妻と私は週末、たいていは土曜の夜にセックスをするのが習慣になっていましたが、それはいつの間にか隔週になっていました。帰りが遅くなる日曜の前日は、妻があれこれと理由をつけてセックスを拒むようになったのです。
もしこれが、毎回同じ男が送ってくるなどということがあれば、私は妻の不倫を疑うところですが、毎回違う男が送ってくるからそういった想像は頭に浮かびませんでした。そんなことが2カ月ほど続き、5月も終わりに近い日曜日にまた妻の帰宅が遅くなりました。
いつもなら遅くても11時前後に帰ってくるところですが、その日は夜中の12時近くになっても妻からの連絡はありませんでした。日曜日ですから終電もなくなる時間です。私はさすがに心配になりました。
12時を少し過ぎた時、門の前にタクシーが停まる音がしました。
私は急いで玄関に出ると扉を開けます。
「どうもすみません、ご主人」
タクシーのドアが開き、恰幅の良い男が姿を現しました。顔はテカテカと光っており、額が禿げ上がっているところがいかにも精力的といった感じを受けます。
「こんなに遅くなるはずじゃなかったんですが、奥様が気分を悪くされて……少し良くなるのを待っていたらこんな時間になってしまいました。誠に申し訳ございません」
そういうと男は隣の座席からぐったりとした妻をズルズルと引きずるように引き出してきます。男の丁寧な口調とは裏腹に、妻への扱いが随分ぞんざいに思えます。妻は眠ってはいないようですが、瞳はとろんとしており、小さく荒い息をついていました。
「絵梨子、どうした、大丈夫か」
「あなた……」
妻は一瞬私の方を見て何かいいたげに口を動かしましたが、すぐにがくりと首を折ります。男に抱えられるようにして眠りこけてしまった妻を、私は呆然と眺めていました。
「申し遅れました、私、犬山と申します」
「ああ、会長さんですか。絵梨子がいつもお世話になっています」
なんと男はB高校PTA会長の犬山でした。私は条件反射のように丁寧なお辞儀をしていました。
犬山は太い眉の下のぎょろりとした目を向け、まるで私を値踏みするように眺め回すとニヤリと笑います。
「いや、こちらこそいつも奥様には大変お世話になっています。ご主人にはご迷惑をかけて恐縮ですが、幸いPTA活動に大変理解が深い方と伺っておりますので、安心です」
「そうですか……」
私は犬山がニヤニヤ笑いを湛えながらもたれかかってくる妻を抱き、片手で妻の尻の辺りを撫でさするような動作をしているのが気になります。
「あの……絵梨子を」
「ああ、そうでした。ついうっかりと。私もだいぶ酔っているようです」
そんなことでうっかりするなどということがあるでしょうか。私は犬山の態度にさすがに苦々しいものを感じました。
そういった気持ちが少し表情に表れたのか、犬山は急に神妙な顔付きになります。
「それでは、奥様を運びましょう。すみませんがご主人、足の方を持ってくれませんか」
「はい……」
道岡の時もそうでしたが、どうして妻の介抱の仕方まで指示されなければならないのかと不快な気持ちになります。しかし、酒に酔った妻をわざわざ送ってきてくれた犬山に強いことも言えず、言われた通り妻の足を持ちます。
「うう……」
身体が持ち上げられたとたん妻は苦しそうなうめき声を上げ、身を捩らせようとします。私はバランスを崩しそうになるのを足を踏ん張ってこらえました。
---続く---